被災した里山集落がにぎやかに復興するための関係人口開発プロジェクト
被災後も静かに営まれる里山の暮らし。農作業や古民家の手入れを通じて、人と土地に寄り添う新しい関わり方を探り、新たな関係人口事業として実際に事業化までつなげます。
このプロジェクトについて
石川県・能登半島の奥に、神野(かんの)という小さな集落があります。町の名前は能登町。海にも山にも近くて、車を少し走らせれば、すぐ目の前に水平線が広がります。けれどこの集落は、あくまで“里山”の風景の中にあります。
ここは、2024年の地震と、その後の水害で一部が被災しました。家や道に傷はあっても、暮らしは止まっていません。静かに、でもしっかりと続いています。神野は、町内に15ある地域のひとつ。震災よりもずっと前から、「関係人口」と呼ばれる外からの人との交流に、少しずつ取り組んできた場所でもあります。神野には、ジブリの映画に出てくるような、どこか懐かしい里山の風景が広がっています。畑があり、季節ごとに山の手入れをする人たちがいて、目を閉じれば鳥の声と風の音が聞こえます。近くの港には新鮮な魚が並び、夕方には海と空の色が溶け合います。そんな毎日が、特別ではなく、あたりまえとして続いている地域です。
でも、課題もあります。震災と高齢化が重なって、草を刈る人、畑を手入れする人、声をかける人が足りなくなってきました。それでも神野の人たちは、まだ希望を持っています。誰かが外から関わってくれることで、暮らしがまた少しずつ動き出す。そんな手応えを感じ始めています。子育てをがんばる若い家族もいます。少ない人数で工夫しながら、集落の行事を守り、季節の手仕事を大切にしています。ただ、「関係人口って実際にはどんなこと?」「どこまで頼っていいの?」と、地域の人も戸惑っているのが正直なところ。だからこそ、お互いに無理なく、楽しみながら、少しずつ関係を育てていけたらと思っています。「長く暮らす必要はありません」――そう言うと、ちょっと語弊があるかもしれません。本当は、できるなら長く関わってくれる人が何よりありがたい。でも、たとえば毎年同じ季節に、数日だけでも訪れてくれる人がいたら、それだけで地域はとても助かります。
また来てくれる。その関係が少しずつ積み重なることで、集落は“にぎやか”になっていきます。
それが、能登が生き残っていくためのひとつの道だと私たちは考えています。特別なスキルがなくても構いません。草を刈る、野菜を収穫する、おばあちゃんとお茶を飲む、子どもたちと遊ぶ。そんな“ふつうのこと”が、ここでは心から喜ばれます。そして、そうした日々のなかで、地域のおじいちゃんおばあちゃんがふと口にします。「孫みたいな子がまた来てくれて、うれしいわ」あなたがここで過ごす時間は、どこかの家庭にとっての“あたらしいカタチの孫”になることもあるのです。
そしてもう一つ、大切なことをお伝えします。あなたが神野で考えてくれたアイデアや企画は、単なる体験で終わりません。それはこの地域の未来をつくる「種」として、大切に受け取り、必ず復興事業として実施につなげます。私たちは、それを約束します。あなたの想いと工夫が、実際のかたちとなり、地域の中で息づいていく。それがこのプロジェクトの核心であり、地域とあなたが本当に関わるということの証だと、私たちは考えています。神野の復興は、建物を直すことだけではありません。人と人との関係を、もう一度やさしく、紡ぎなおすこと。その一つひとつが、未来をつくっていくのです。
この里山と、どんなふうに関われるか。
海と山と人のあいだで、ゆっくりと探してみませんか。あなたの関わりが、この土地に風を送り、小さな未来の芽を育ててくれることを、心から願っています。
プログラム要項
仕事内容 |
被災した里山集落が持続するための関係人口企画を考えて事業化するプロセス
【STEP1】寝床と風呂と食料調達の確保とご挨拶をしましょう。 ・滞在期間中に拠点となる場所の確認や食材調達(買い物)などの導線などの確認 ・主に関わる受け入れ側の人たちとの顔合わせと食事会
【STEP2】まずはひとつ、お手伝いから始めましょう。 ・事前に設定している「草刈り」や「畑の収穫」などのお手伝い ・いろいろな世代と話をする機会を提供します
【STEP3】お手伝いや交流を探したり、つくってみよう。 ・交流の中で出てくる「お困りごと」や、更に「諦めごと」などをヒアリングし、お手伝いできることを見つける ・滞在期間中に参加する別のチームとの交流や受入補助などのお手伝い ・他の集落や被災地も視察し、集落の実態を感じましょう。
【STEP4】振り返り+事業化に向けた打ち合わせ(オンライン) ・滞在中の振り返り(感想や、今後受け入れるためのポジティブなヒントを教えて下さい) ・考えていただいた企画を元に、スタッフや関係者と共にブラッシュアップし事業化に向けて打ち合わせを必要回数行います。 ★学業にマイナス影響となりたくないので、無理に時間を使うことはしなくてOKです。 ★継続して関わることももちろん大歓迎です。
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インターン生に期待する成果 |
・日常的な関わりや対話を通じて、「また来てほしい」と思ってもらえる関係性を築くこと。 ・「年に何回、どんな形で関わると良いか?」という問いに対して、自分なりの仮説やスタイルを持ち帰ること。 ・関係人口に対する住民側の不安や遠慮が、学生との関わりを通じて和らぎ、「また受け入れたい」と思ってもらえること。 ・一度きりの滞在では終わらせず、「次はこんなふうに関わってみたい」という想いを言語化すること。 |
インターン修了時に得られる経験 |
・草刈りで“里山の美しさ”を守る経験 ・古民家の維持から学ぶ“暮らしをつなぐ知恵” ・里山集落がどのような対話で形成されているかの知見 ・旬の夏野菜に触れる“季節のリズム”の体験(本当の野菜の美味しさ) ・震災、水害を乗り越えて暮らす“日常のたくましさ” ・子育て世帯との対話から見える“地方の暮らしのリアル” ・能登にまた帰って来ることができる場所と家族 |
対象となる人 |
募集人数:1-3人(高校生の参加不可) ★自分の車で来て、運転できる方 ※心苦しい条件ですが、被災後全てを送迎することが出来ないため。 ・里山の暮らしを体験したり、楽しみたい人 ・自炊や野遊びに積極的に挑戦できる人 ・シニアのお話を楽しく聞ける人 ・男女不問 |
活動条件 |
参加型:住み込み(集会所もしくは集落の方の家にホームステイ) 活動期間:活動期間:8月10日~9月15日の約3週間(都合により調整します) 活動時間:日の出から日の入りまで。おおよそ日中。特に時間指定無し 交通費:一部支給有り。要相談 宿泊費:無料 ※食費やそのほかの費用はなどは基本自己負担となりますが、野菜を収穫するなどの自己調達やお裾分けなどの提供もあります。海も近いため、アカイカや魚などの釣りも可能です。 |
活動支援金 |
なし |
団体の紹介
来てもいい、通ってもいい。関わることで、集落は強くなる。
能登町定住促進協議会は、石川県能登町において移住・定住の促進、関係人口・交流人口の創出を通じて、地域の活性化と持続可能な集落づくりを推進する一般社団法人です。町内各地で人口減少や高齢化が進むなか、地域内外の多様な人々の関わりを支える仕組みづくりを行っています。令和6年の能登半島地震および大水害以降は、特に被災集落の復旧・復興支援に注力し、地域住民と外部人材が協働しながら新たな暮らしの再建とコミュニティの再生を支援しています。行政や企業、大学とも連携しながら、関係人口による「賑やかな過疎」の実現を目指しています。
代表者 |
田代信夫 |
設立 |
2015/04/01 |
従業員数 |
7名 |
ホームページURL |
https://nototown.jp/ |
住所(郵便番号なし) |
石川県鳳珠郡能登町宇出津ト字29-2 コンセールのと1F(仮事務所) |
受け入れ団体からのメッセージ
今、地域で一番求められているのは、「何ができるか」よりも、「また来てくれたね」という関係です。令和6年の地震と水害で、能登の多くの集落は傷つきました。神野エリアもそのひとつです。復旧が進まない場所も多く、先の見えない日々に心が折れそうになることもあります。けれど、そんな中で、何よりも地域の人たちの心を支えているのは――初めて来た人が、もう一度戻ってきてくれることなんです。「また来てくれた」このたった一言が、地域にとってどれだけの励ましになるか。皆さんに、特別なスキルや体力はいりません。笑ってくれること、話を聞いてくれること、一緒にご飯を食べてくれること――それだけで、地域の空気は変わります。「関係人口」なんて難しい言葉にしなくても、ただ関わってくれる人の存在が、集落の希望になります。だから、どうか気軽に、そして気長に。一度来てくれたら、きっと「また来たい」と思える何かに出会えるはずです。能登で、神野で、お会いできるのを心から楽しみにしています。
能登町定住促進協議会 専務理事/移住コーディネーター 森進之介
石川県金沢市出身。民間企業や起業などさまざまな職業を経験した後、2015年、家族とともに石川県能登町に移住。移住を検討していた当時、地域から「移住コーディネーター」の仕事を紹介されたことをきっかけに、地域と人をつなぐ役割を担うようになりました。現在は、能登町定住促進協議会の専務理事として、町内の集落支援や移住・定住、関係人口の受け入れ体制づくりを進めています。令和6年の能登半島地震では、自宅を失い、家族にも大きな影響がありましたが、地域の方々とともに再建に向けて歩んでいます。「また来てくれた」と言ってもらえる関係を大切に、外の人と地域の未来をつなぐ活動を続けています。