OBOGインタービュー第一弾は、金沢の大学へ通いながら長期の能登留学に挑戦した田村くん。周りと同じように就職活動を始めた彼が、能登留学へと挑戦することとなったその心の変化からインタビューはスタートしました。
Profile
田村 隆典
大阪府出身 金沢大学3年(当時)
インターン期間:2015年10月〜2016年3月
キツそうやなぁ、というネガティブな第一印象
ー 能登でインターンシップをしようと思ったきっかけはいつでしたか?
「たまたま学内で知ったKIC(金沢で開催される能登留学募集イベント)の情報を見たのがきっかけです。最初はほんまに、スケジュールがあったから行っただけでした。笑」
ー イベントに参加してみて、最初から長期で能登へ来ようと思えたんですか?
「いえ。。。6ヶ月も……しかも能登ってよーわからんところで……という感じやったので、最初は難しそう、ハードル高いなという印象でした。
ー それまではインターンについて考えたことはありました?
「それまではインターンシップといえば、マイナビとかがやる長くても2週間のものしか知らなかったので、6ヶ月と聞いたときは最初ホンマにやらんとこうかなと思ってました。話を聞いてみた経験者からも『かなりキツイよ』って言われていましたし。」
大手ナビサイトに登録して……という世の中の大きな流れに乗って就職活動を始めた田村くん。どこに行くとかは決まってなかったけど、よくわからんから周りの友達に合わせておこうという一般的な学生の感覚で過ごしていました。では、そこから、能登で挑戦してみようと決断することができたのはなぜだったのでしょうか。
もう流されたくない
ー キツそうやな、と思ってたことに挑戦する決断ができたのはなぜですか?
「最初は6ヶ月もあったら別のことできるやろ?と思ってたけど、よく考えたら、今のままじゃ何もせえへんかもなぁ、と思い至って。イベント(前出のKIC)で見かけた「周りに流されるな」というスライドがずっと響いてたんです。その言葉がずっと頭に引っかかってたので。」
ー これまでは流されることもあったという意味ですか?
「マイナビのインターンが典型的かも。特に、どこに行きたいとか何をしたいとか決まってないけど、周りがやっているからやっておこう、という意識が働いていました。」
勇気を持って一歩、周りと違う道を歩き始めた田村くん。
彼が挑戦の舞台として選んだのは、能登・七尾で120年続く老舗和ろうそく店。
伝統産業を海外へ伝えるマーケティング活動でした。
能登で気付いた、自分の弱み
ー プロジェクトがたくさんある中でなぜ高澤ろうそくを選んだ理由は?
「元々、ゼミで学んでいたマーケティングを仕事にしてみたいと思っていたので、『伝統工芸品の海外マーケティング』というキャッチコピーに惹かれました。3年の夏になっても将来就きたい仕事がはっきりとしていなかったので、いろんな大学の人や会ったことのないような大人がいる新しい環境に飛び込んで、何かのきっかけにしたいと思いました。」
ー インターン中に自分がぶち当たった壁はなんでしたか?
「大人との関係ですね。インターンの仕事/生活でも両方含めて、大人とのコミュニケーションには苦労しました。今までは顧問の先生とバイト先の大人くらいしか喋ったことなかったんで、気を使いすぎたり、何を喋っていいかわからなかったり。報告・連絡・相談が遅れたりとか。」
ー プロジェクトを進めてく上で苦労したことはありましたか?
「海外マーケティングという言葉が漠然としすぎていて、何から手を付けていいのか最初わからなかった。最終的には、ヒントを貰いながら導いてもらったことで、英語メールを送る、店舗を検索して増やすなどのアプローチが分かってきて進めることができましたけど。」
ー 英語って得意でしたっけ?
「センター試験、大学入試レベルですね。」
ー 業務での(海外店舗への)英語メールにはどう対応していたのですか?
「たまたま英語に強い大人が周りに居たので、アドバイスをもらいました。」
ー 自分の課題だった“周りの大人とのコミュニケーション”はどうクリアしましたか?
「2ヶ月経って、やることもはっきりしてきたことで少しずつ自信を持てるようになってきていました。だから、意識して、業務に関することでも大人とのコミュニケーションを積極的に取るようにしていきました。」
大人とコミュニケーションを取るというのは、単に話をすることではなく、自分のやりたいこと、関わるプロジェクトに大人を巻き込んでいくことです。
田村くんは苦手意識を感じたその部分から逃げずに向き合ったことで、少しづつ成果を挙げていくことができました。
地域を支える家業という存在
ー 受け入れ担当者の高澤久さんってどんな人でした?
「かっこいい人でした。」
ー 写真写り、とてもかっこいいですよね。笑
「はい、それもありますけど。笑」
ー 他にかっこいいなと思えた瞬間があったのなら教えてください。
「高澤さんはそんなに口数多いわけじゃないじゃないですよね。でも、あるとき車で一緒に移動しているときに、利益だけを追い求めるわけじゃないというエピソードを聞く機会があって。それを聞いて高澤さんの本当の凄さを感じました。」
彼が挑戦していたのは、能登を代表する家業でした。
その高澤家のみなさんからの暖かいサポートを受けながらインターンを無事終えた田村くん。
今は就職活動も終わり、卒業までの残り期間を過ごしています。
そんな彼がインターンを経て得たものは何だったのでしょうか。
能登留学はゴールではなくきっかけ
ー ここからは能登留学から得たものを聞いていきたいなと。まずは仕事を決めるとき、インターンシップの経験はどう活きていますか?
「元々はざっくりとメーカーでは働きたいと思っていました。能登留学のインターンを経て、自動車の部品、みたいな部品メーカーではなく、1つの完成品を提供するメーカーに就職したいと思うようになりました。これ就職活動でも何度も言ってたんですけど、高澤ろうそくみたいに自分とこの製品に愛着を持ちたいから。」
ー なるほど。ちなみにインターン中に特に影響を受けた人は居ましたか?
「同期のインターン仲間たちですね。休学したり、強い思いを持って東京から地域へやってきているのを聞いて、自分があんまり考えてこうへんことを考えていて、すごい人達が集まっているなぁと思いました。休学してまで、自分の選択をできるってことはすごいなと。」
ー では最後に、自分のキャリアにとって能登留学はどんな意味がありましたか?
「働くことを考える上でめっちゃ大きかったです。でもそれだけじゃなくて、これまでに出会ってこなかった人とどんどん知り合っていくなど、能登留学が色んなきっかけになりましたね。」
インターン生活中の印象的な出来事を聞いたところ、「玄関でバイ貝を割ったこと」と「インターンハウスの居間で朝爆睡していた人が、実は総務省の重要役人だったこと」というディープな思い出が出てきました。
そんなエピソードも含めて終始あっけらかんと話す彼からは、なにか芯の強さを感じました。それは、彼がもう周りに流されることなく、自分で判断して行動できる人間に成長できたからかもしれません。