企業インタビュー第2弾は、まいもん処いしり亭の経営者である森山明能さんです。
いしり亭は、能登の海の恵みたっぷりの魚醤油料理専門店です。
現在4名のスタッフがおり、なんと、全員65歳以上です。
インターンシップでは、経営改革プロジェクトを行っていました。
これまでのインターン生
2015年8月~9月 三本木優希さん
2016年1月~3月 木戸口航さん
2017年8月~9月 宇都宮志帆さん
2017年9月~12月 海野将志さん
インターン生の記事はこちら。
赤字を公表した、前例のないプロジェクト。
ー黒字達成を目標にされていたと思います。
実際に単月黒字も達成されていますが、現在はいかがですか。
「赤字ではありますが、月あたりの赤字額がかなり減少してきています。
具体的な成果として出たものとしては、木戸口君の時にはじめたお弁当販売による売り上げが定常化したことが大きいですね。」
お弁当販売は、主に製薬会社向けで、高めの価格設定でスタートさせました。
現在では固定のお客さんがつき、収入源の一つとなっています。
ーその際に、お店が将来どのようなサービスを提供していくかという計画を時系列でまとめたロードマップの作成をしたと伺いました。詳しくお話を伺いたいです。
「今は現場で形骸化しつつはあるのですが、黒字化に向けての指針のようなものはおばちゃんたちとも共有でき、共通理解が生まれました。『一緒にがんばろう!』という雰囲気は生まれましたね。」
「それから最近、新しくパートさんを雇ったんです。」
ーそうなんですか!なぜパートさんを雇ったのですか?
「1つは、残業時間分を新しいパートさんが通常時間に働くことで、結果的に人件費削減になるということ。
もう1つは、おばちゃんたちから次の世代に渡すためです。
パートさんを雇うことができたのも、今までインターン生を継続して入れてきたからこそですね。」
おばちゃんたちが「なんとかしなきゃ」と思い始めた。
ーインターン生が入ってから、社内の雰囲気に変化はありましたか。
「変わりましたね。
1人目のインターン生の三本木さんが積極的におばちゃんと関わっていたことは大きいと思います。
彼女は、いしり亭のミッション・ビジョンを作り、
おばちゃんも含めてワークショップを定期的に行っていました。
意見交換をすることで、みんなで考えることができるようになったと思います。」
「現在も店内の壁にミッションが貼ってあり、パートのおばちゃんがミッションの意味を自分ごととして捉えることができていますね。」
ーインターン生の有無で、社員の当事者意識に変化はありますか。
「大いにあったと思います。インターン生がなにか考えてくれたら、それをやるという状態であったのが、
自分たちがなんとかしなきゃいけないという意識に変わったと思いますね。
新しいことを始めるときの億劫さがなくなってきたと思います。」
ーその結果、新しいインターンプロジェクトにもどんどん協力的になっていったということでしょうか。
「そうだと思いますね。例えば、最初にお弁当販売を始めた時も、そんな高いお弁当作れないという声がおばちゃんたちから上がったんです。でも、『いつもの夜のお食事を詰めれば大丈夫でしょ?』と話すと、じゃあやってみようということになって、初めての挑戦にも乗り越えていけました。」
1人目のインターン生の三本木さんは卒論のテーマにいしり亭を取り上げ、インターン終了後も継続していしり亭に足を運んでいました。
インターンの究極のゴールは組織改革
ーもし、インターン生を導入しないという選択をされた場合に代わりにどんな施策、あるいはプロジェクトを行っていたと思われますか。
「んー。まずはインターン生を入れることからはじめようと思っていたんですよ。
長年働いてきたパートの4人は阿吽の呼吸で動けてしまうので、社員に教える経験がなかったんです。まずは、新しい人材(インターン生)に仕事を教えたり、コミュニケーションをとることに慣れていき、その後に新しいパートを雇うことができると考えていました。」
「要はインターンの究極の形は組織改革であって、それを通じて初めて経営改革ができていくということなんです。インターン生が貨幣価値に換算できる成果にはある程度限度があるけれど、うちはその中でもかなりいい成果がでていると思います。赤字額の圧縮や、毎月お弁当の売り上げがあることなど。私自身もっといしり亭の経営に関与するようになり、社員の雰囲気も変わりました。」
インターンを進めやすい環境づくり
ーインターン生を受け入れる中で、改善点はありましたか。
「自分がフルコミットできないことによって、インターン生の推進力が弱まってしまっているなと感じることもあります。その改善策として、海野君の時には自分の右腕として1週間かばん持ちをしてもらいました。お互いに相手のことを知り、よい関係性を作ることができたので、その後の仕事面でのスピード感が違いましたね。」
ーコーディネーターとのかかわり方に関してはどうですか?
「インターン開始から同じコーディネーターが継続して担当していることもあり、
サポートしてもらっています。問題の構造をとらえてプロジェクト設計をするので、とてもやりやすいですね。」
赤字であった状態から、ミッションを作ったり、お弁当販売を始めたりと新しいチャレンジをし続けてきたいしり亭。そこには、インターン生の努力、コーディネーターのサポートがあり、経営者からおばちゃんたちに伝わった「なんとかしなきゃ」という想いがありました。
現在は新しいパートさんも加わり、今後も経営改革は進みます。
インターン生の活動が今に繋がっていることを感じられるお話でした。