企業インタビュー第3弾は、株式会社ホテル海望の宮田清孝さん。
ホテル海望は、和倉温泉にある創業明治23年の旅館です。
平均60歳以上の従業員が多く、意識改革や企業としての働き方改革が課題となっていました。インターンシップでは、主に社内報の発刊を行うプロジェクトを行ってきました。
これまでのインターン生
2015年9月~2016年2月 青野美緒さん
2015年11月~2016年2月 竹田和音さん
2017年6月~8月 瀬尾美優さん
2017年8月~9月 飯田なおさん
2017年8月~9月 吉田圭織さん
2017年10月~2018年1月 末富太一さん
はじまりは、現状を変えたい、という想いから。
もともと、インターンを導入しようと思うきっかけとなったのは何だったのでしょうか?
ー「当時、新卒社員を雇っても、すぐにやめてしまうという状況が続いていました。
この現状を何とかしなくてはと思っているところで、インターンシップ事業のお話を頂き、ちょうどよい機会でもあると思ってインターンシップを行うことを決意しました。」
とはいえ、不安に思うことはありませんでしたか?
ー「私自身、インターンシップを導入すること自体に関してはかなり前向きでしたね。
ですが、社員がインターン生をうまく受け入れられるかという懸念点はありました。」
1人目のインターン生の時には、新入社員5人のプロジェクトチームの中に入ってもらい、食事処花かごの付加価値率を2倍にするというプロジェクトを行いました。結果は見事、目標達成!そしてJTBお客様アンケート評価でも、これまでは80点台前半だったものが、見事88点にまで向上しました。
実際にインターン生を受け入れてみて、社内の様子に変化はありましたか?
ー「新入社員によって社内改革をしようとした時は、職場の雰囲気があまり良くなかったんです。でも、社会勉強に来ているインターン生という立場だと、利害関係もないので社員も受け入れてくれて、温かく接していました。」
後列左が宮田さん。前列左から2人はインターン生。
社内報が生んだコミュニケーション
2017年からは、社内報の発刊を行うようになりました。
3人目以降のインターン生のプロジェクトでは、社内報の発刊を行っていらっしゃいます。やはり、社内のコミュニケーションが課題であると考えていらっしゃったということでしょうか?
ー「はい。実は、従業員の中でお互いが勝手に線引きをしている状況で、相手のことを考えて行動できていない社員が多かったんです。人の悪口を言う従業員もいて、いい雰囲気ではなかったですね。この状況を何とかしたいという想いはありました。また、社内報の発刊という業務自体、インターン生にとっては取り組みやすく工夫しがいもあり、ちょうどよい業務レベルであると思っているからでもありますね。」
ーなるほど。社員さんのコミュニケーションを活性化させようという思いのもとで、プロジェクトをはじめられたと思うのですが、長期的に見た場合に、インターンを導入したことによる社員さんのコミュニケーションの変化は感じられましたか。
「社内報では、社員のことが取り上げられる企画があって、初めは写真を撮られたり、自分について書かれることを嫌がる社員もいました。ですが、少しづつインターン生に協力的になっていきましたね。そうすると、今までは悪口が多かったのが、だんだん社員間で共通のポジティブな話題が見つかるようになったんですよ。朝ドラの話とか、そんなちょっとしたことを話すようになってきたんです。」
ーそれは、大きな変化ですね、、、!社内報が、部門を越えてつながる大事なツールとなっていったのですね。
「そうですね。海望が唯一の居場所であるがゆえに、人からどう見られているのかを気にする社員が多いんです。みんな、海望のことは好きなんですけど、それをうまく言語化するのがなかなか難しいんですよね。僕と同じで恥ずかしがり屋さんなので。(笑)」
インターン生の中間セッションの様子。
自分の課題と向き合う期間。
ーインターン生を受け入れてきた中で感じたことを伺いたいと思います。
「まず、長期の方がお互いにメリットが大きいことは間違いないと思います。
伸び幅でいうと、1か月インターンと6か月インターンだと、3倍ぐらい違うんじゃないかなっていうくらい。1か月だと、レール上を学生がただ進んでいるだけで終わる印象ですが、6か月になると自分の中での課題がみつかって、それをどう解決するかまで考えることができるので。」
ーそんなにも、学生の成長度合いが違うんですね、、、。
「インターンの中で、最終的には自分の課題をどう解決するかっていうところに行き着くと思います。
企業側の問題解決っていうのはインターン生にとっては練習問題なんですよ。自分探しのためにインターンに参加する学生が8割くらいで、プロジェクトの中身に関して実はそれほど重視していないという人が多いと思います。自分の目的が漠然としている中で、いま何をしなければいけないのかを明確にしていくことの重要性を学生から学びましたし、そういう学生が多いんだろうなと思いますね。」
ーなるほど。インターン生にとっては、自分と向き合う時間になっているんですね。
「人を育てる」経験が企業を変えていく。
ープロジェクトの中身よりも、自分探しの学生が来る、という現状には納得されていますか?
「はい、それでいいと思っています。
プロジェクトを進めていくだけなら社会人でもできますが、海望のインターンは学生の成長に目を向けています。うちのインターンが労働力であってはいけないと思うのです。インターン生に海望の労働力として助けてもらいたいとは考えていません。
要は、人を育てることに従業員が慣れることがとても大事だと思っています。うちに足りていないところはそこなんですよね。だからこそ、インターンシップをやる大きな価値があると思っています。」
従業員と共に生み出す、新しい海望。
「自分たちと違う価値観の人が入ることの変化を大切にしたいと思っています。
『お客様だから、お客様に合わせよう』では足りないと思っています。もちろんお客様に勧めたいものがありますが、自分たちが持っていないもの、気づいていないものを持っているお客様もいます。そういったお客様の声も取り入れていくことで、新しいホテル海望の在り方が見いだせる。それを目指していきたいと思っています。」
社員さんではなく、インターン生が社内報を作るということに価値を見出し、インターン生と共に成長していくことを大事にしているホテル海望。今までのインターン生が作ってきた社内報が、少しづつ社内の風通しをより良くしていき、大きな変化を生み出す流れをつくってきているのだと実感しました。